てつるぶろぐ

仮住まいなう

孤独なバッタ研究者がJKになるとき

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前野ウルド浩太郎さんの「孤独なバッタが群れるとき」を読んでエントリをおこさないと、と思っていたまま時間だけが過ぎてしまいました。恥ずかしながら今更、滅多に書かないけど書評というか、ヨイショエントリです。

孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

この本には、前野少年が虫と戯れファーブルに憧れ素敵な先生や同僚と研究をし、海外研究者と切磋琢磨し、新木場の夜の蝶を追いかけたりしつつ着実に昆虫博士として生きていく姿が等身大すぎるほど描かれています。

新木場の夜の蝶もですが特に研究内容については、本当に一歩ずつ丁寧に丁寧に歩いて尾根に登りさらに高みを目指す、山登りのような空気を感じられる素敵っぷりでした。途中途中に出てくる海外の先行研究や、ライバル研究者の研究が車で行ったような感じなのに対して。(まあ一人称か否かという面はあると思いますが)

実験に成功したことはもちろん、実験で思った結果が得られなかったことも、そこから発展して新たな研究テーマを見つけることも、全てにそのプロセスや検討した可能性が書いてあって、読みすすめるうちにいつしか前野さんのシャドーイングをしているような、あるいは一緒に研究をしているような気になっていました。

また、研究の最先端を余すところなく書いてあるにも関わらず「わからない人」にもすごく配慮されていて、例えばメンデルの法則もきちんとページを割いて説明がなされていたり、その一方で研究所の他の研究者さんやパートのおばちゃんも紹介されていたりと、(ブログの音速の貴公子もですが)前野さんのまなざしの広さと優しさ(とモテ要素)を思いました。
そして当然のことのようにすごく研究対象のバッタをとても大事にされている。


目次や帯がキワものっぼくて東海大出版会やりおったワwwwと思っていたのですが*1、本文に入る頃にはちゃんと姿勢を正して読もうと座り直す感じ。

そしてどんどん進む研究内容の疾走感に乗って読み進めて、最後の最後、巻末のバッタへの謝辞でその時新幹線の中なのにちょっと泣けました。
ここまで大事にされるのなら、生まれ変わったら前野さんの実験台のバッタになりた、くはないなやっぱりと思いました。


しかし。
思えば、自分の世代は子供の頃テレビをつければ千石先生やムツゴロウさんがいて、変ではあるけど妙に愛すべき動物好きな人を見ながら育ち、それが今でもさかなクンやバッタ博士やクマムシ堀川さんがいるというところにとてもとても、幸せな同時代性を感じています。

その一方で、科学に好意というか好奇心を持っていて、でも「科学者」ではない自分のような人間には、この素晴らしい本が近い世代から出てきたことに、少し古傷というか幻肢痛のような、なりえたかもしれない自分に対していたた、という感じもちょっといたしました。

で。@alchmistonpuku さんも

この、前野ウルド浩太郎氏の「孤独なバッタが群れるとき」は、高校生くらいの人にぜひ読んでいただきたい。もしくは、この先を迷う人たちに。道を示してくれるわけではないですが、人生一度くらい思いっきり何かにぶつかってみるのは悪いことじゃない、そんな気持ちにさせてくれる本です。

http://winyaan.blog106.fc2.com/blog-entry-357.html

と書かれていましたが、自分も高校生くらいに読んで欲しいなーと思ったので、出身校宛に二冊送りつけておきました。(図書館に置いて欲しいけど登録処理やら何やかやが面倒なら生物部にでもどうぞ、と書いておいた)
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一冊は昆虫大学で買って、三冊追加で買ったのだけどレターパック350には二冊しか入らなそうだったので今うちで複本になっています。そのうち近所の図書館に寄贈しよう。

どうかこの本が、面白いことしたいのにどうしたらいいかわからないような、迷える若者の手に届きますように。

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昆虫大学でサイン貰ったのはちゃんと大事に取ってるよー。

最後になりましたがid:otokomaenoさん、白眉センター特任助教就任おめでとうございます
アウトプットをしていれば見る人は見ていてくれる、という意味でもますます若い人の励みになるんじゃないかなー。
十分頑張っておられると思うので、ますますみんなをムキーッとさせるくらい楽しい研究に励んで下さいませ。

あわせて読んで貰えると嬉しい

さかなクンさんとクニマスのこと。 - tetzlgraph てつるぐらふ
地べたのサイエンスつながりということでここはひとつ。

*1:いやしかしその後のシリーズ見ても企画・編集さんがかなりデキるなとは思う